米国雇用統計(2025年12月分)は、2026年1月9日(金)22:30(日本時間)に発表予定です。今回は、秋の政府閉鎖(シャットダウン)の影響で「データの霧」がかかっていた局面から、通常サイクルに戻った直後の発表になります。相場が「ソフトランディング(軟着陸)」か「リセッション(景気後退)」かを見極めに行くタイミングとして注目度が高いイベントです。
この記事のゴール
- 発表スケジュール(何時に、何が出るか)
- 市場の見方(コンセンサス)
- ドル円・米国株がどう分岐しやすいか(3シナリオ)
- 初心者がハマりやすい「罠」と、当日のチェック手順
YouTube解説:
1. 発表スケジュール(まずは時間だけは間違えない)
| 対象月 | 2025年12月(December 2025) |
|---|---|
| 発表日時(米国東部時間) | 2026年1月9日(金)08:30 ET |
| 発表日時(日本時間) | 2026年1月9日(金)22:30 JST |
| 発表機関 | BLS(米労働省 労働統計局) |
| 正式名称 | The Employment Situation – December 2025 |
なお前回は、政府閉鎖の影響で10月・11月分がまとめて発表されるなど変則がありました。今回は通常のサイクルに戻った直後のため、「数字の解釈」が市場テーマになりやすい点に注意が必要です。
2. 市場のコンセンサス(予想との差が相場を動かす)
相場は「良い数字/悪い数字」よりも、事前予想(コンセンサス)との乖離で動きます。まずは主要3点セットを押さえます。
| 指標 | 前回(2025年11月分) | 市場コンセンサス(2025年12月分) | 予想レンジ |
|---|---|---|---|
| NFP(非農業部門雇用者数:農業を除く雇用増減) | +64,000人 | +70,000〜+120,000人 | +25,000〜+155,000 |
| 失業率(働く意思があり職がない人の割合) | 4.6% | 4.5% | 4.4%〜4.7% |
| 平均時給(賃金の伸び:インフレ圧力の温度計) | 前月比 +0.1% / 前年比 +3.5% | 前月比 +0.3% / 前年比 +3.6% | 前月比 +0.2%〜+0.4% / 前年比 +3.5%〜+3.7% |
見る順番(初心者向けの型)
- NFP・失業率・平均時給(まずヘッドライン)
- リビジョン(改定:過去分の上方/下方修正)
- 中身(労働参加率・週平均労働時間・業種別の内訳)
3. 今回がややこしい理由:ヘッドラインだけで決め打ちしづらい
前回(2025年12月16日)は、NFPが予想を上回っても、失業率の悪化や改定で市場が揺れて「方向感が出にくい」展開になりました。今回も同様に、ヘッドラインの1つだけで結論を出すと危険になりやすい局面です。
加えて、一部報道では、FRB(米国の中央銀行)のパウエル議長が雇用統計の推計に関して「過大評価の可能性」に言及したと伝えられています。ここは誤解されやすいポイントで、公式に“毎回一定数を差し引く”ルールがあるわけではありません。市場がこの論点をどう材料視するか(センチメント)を観察する、という位置づけが安全です。
4. NFPと失業率がズレるのは普通(だから両方見る)
雇用統計は、ざっくり言うと「別のアンケートを2つ見ている」構造です。
- NFP:企業の給与台帳ベース(事業所調査)。副業が増えると“仕事の数”として増えやすい。
- 失業率:家計への聞き取り(家計調査)。同じ人が仕事を2つ持っても“人の数”は1人。
つまり、「NFPは強いのに失業率が悪い」は普通に起こり得ます。相場が景気後退を気にしている局面では、NFPよりも失業率が重く見られることがあります。
5. シナリオ分岐:ドル円・米株はこう動きやすい
以下は“目安”としての3シナリオです。実際は賃金・改定・中身次第でねじれるので、あくまで地図として使ってください。
| シナリオ | 条件の目安 | 米金利(特に2年) | ドル円 | 米国株 |
|---|---|---|---|---|
| A:ソフトランディング(概ねコンセンサス通り) | NFP +70k〜+110k、失業率 4.5%程度、賃金は極端に強くない | 横ばい〜やや上 | 円安寄り | 上がりやすい(安心感) |
| B:リセッション懸念(下振れ) | NFP +40k未満(またはマイナス)、失業率 4.7%以上、改定も下方 | 低下しやすい | 円高寄り | 下がりやすい(悪いニュースは悪いニュース) |
| C:ノーランディング/インフレ再燃(上振れ) | NFP +160k以上、失業率 4.4%以下、賃金が強い(例:前月比+0.5%超) | 上昇しやすい | 円安加速 | 金利上昇が重荷になりやすい |
6. 初心者がハマる「4つの罠」
罠1:NFPだけ見て飛びつく
発表直後はアルゴ(高速売買)がヘッドラインに反応しますが、数十秒〜数分で「失業率・改定・中身」に注目が移ります。初動=結論にしないことが重要です。
罠2:「過大評価の数字」を公式補正だと思い込む
議論の存在は意識しつつも、機械的に差し引く前提で判断しないほうが安全です。市場がその論点をどう解釈しているか(コメント・金利反応)を見るのが現実的です。
罠3:天候・一時要因を景気全体と誤認する
12月は建設などが天候でぶれやすいことがあります。特定業種だけ弱いのか、広範囲に弱いのかで意味が変わります。
罠4:改定(リビジョン)を見落とす
速報が良くても、過去分が大きく下方修正されると「トータルで弱い」と評価されることがあります。発表直後は必ず改定も確認してください。
7. 当日のチェックリスト(この順で見ると迷いにくい)
発表前(22:30の前)
- 米2年/10年国債利回り(相場のハブになりやすい)
- ドル円(USD/JPY)
- S&P500 / NASDAQ先物
- 「市場が何を怖がっているか」(金利低下=景気懸念が優勢、など)
発表直後(最初の5分)
- NFP・失業率・平均時給
- 改定(過去分の上方/下方)
- 労働参加率・週平均労働時間(雇用の質のヒント)
- 業種別(ヘルスケア、建設、運輸などの偏り)
30〜60分後(相場の解釈が固まりやすい)
- 金利主導なのか、株主導なのかを整理
- 「初動」と「結論」を分けて振り返る
注意:指標発表時はスプレッド拡大(売買コストが広がること)やスリッページ(想定より不利な価格で約定すること)が起きやすくなります。短期売買をする場合は、ポジションサイズを落とす・逆指値を見直すなど、まずリスク管理を優先してください。
8. 直近イベントの振り返り(反応パターンをつかむ)
| 発表日 | 対象月 | 結果 | ドル円 | S&P500 |
|---|---|---|---|---|
| 2025/12/16 | 11月 | +64k / 4.6% | 乱高下後に円高 | 下落 |
| 2025/11/20 | 9月 | +119k / – | 円安 | 上昇 |
| 2025/09/05 | 8月 | +22k / 4.3% | 急円高 | 急落 |
まとめ:雇用統計は「答え」ではなく「分岐スイッチ」
雇用統計は、FRBの政策見通し→米金利→ドル円→株式という順番で波及しやすいイベントです。今回は特に、失業率・改定・中身まで見て初めて評価が固まりやすい局面になります。
当日は「見る順番」を固定し、初動の値動きに結論を乗せないこと。これだけでも判断ミスは減ります。
免責事項:本記事は情報提供を目的としており、特定の銘柄・通貨の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。
参考リンク
- BLS(雇用統計の発表スケジュール):https://www.bls.gov/schedule/news_release/empsit.htm
- BLS(雇用統計リリースの例:Employment Situation):https://www.bls.gov/news.release/empsit.nr0.htm


