COMEX銀「受渡通知」急増の噂を検証|名義変更と在庫枯渇の見分け方

コモディティ

銀(シルバー)市場で「COMEXが崩壊するかもしれない」という強い言葉を伴った噂が拡散しています。きっかけとして挙げられているのが、COMEX銀先物の1月限で受渡通知(Delivery Notice)が増えているという点です。

本記事では、個人投資家向けに、噂の“どこが事実で、どこから先が飛躍しやすいのか”を、できるだけ噛み砕いて整理します。

YouTube解説:

まず噂の中心:受渡通知「9,181枚」は何を意味するのか

噂でよく引用される数字が、受渡通知が9,181枚というものです。COMEX銀先物は1枚=5,000オンスなので、単純計算では以下の規模になります。

  • 9,181枚 × 5,000オンス = 45,905,000オンス(約4,590万オンス)
  • ざっくり言えば「約4,600万オンス規模」という表現になります

数字だけを見ると非常に大きく感じます。ただし、ここで重要なのは「受渡通知=銀が倉庫から消えた」ではないという点です。

結論を先に:受渡通知は“火災報知器”に近い

結論から言うと、受渡通知が増えたという話は、まず「倉庫の中で銀の持ち主が入れ替わった(名義変更が増えた)」という意味合いが強いです。

ただし、名義変更が増えることが現物を引き出したい人が増えているサインになっている可能性はあります。しかし、名義変更=引き出し確定ではありません。

だから受渡通知は、たとえるなら火災報知器のようなものです。鳴ったからといって火事と決めつけるのは早いですが、火の気(=引き出しや供給ストレス)があるのかは追加データで確認する必要があります。

そもそも「受渡」とは何か:現物輸送より“名義変更”が中心

初心者がつまずきやすいポイントは、「受渡=トラックで現物が動くこと」と思ってしまうことです。COMEXの受渡は、実務的には倉庫内の所有権証明(ワラント)の移転、つまり名義変更で成立するケースが多いです。

イメージしやすく言い換えると、こうなります。

  • 指定倉庫:金庫
  • 銀バー:金庫の中の現物
  • ワラント:金庫の中の現物の「引換証(所有権の証明)」

受渡通知が増えた段階で確実に言えるのは、「引換証の移転が増えた可能性が高い」というところまでです。

EligibleとRegistered:何が違うのか

次に重要なのがEligible(エリジブル)Registered(レジスタード)です。どちらも「倉庫に銀がある」点は同じですが、違いは受渡に使える状態かどうかです。

  • Eligible:規格はOKで倉庫にあるが、受渡用のワラントが発行されていない状態
  • Registered:受渡に使えるワラントが発行されている状態(受渡に回せる)

注意点として、Registeredにあるからといって「勝手に誰かに取られる」という意味ではありません。あくまで受渡に使える形に整っているという状態の違いです。

期近プレミアムやスプレッドの歪みは、なぜ起きやすいのか

Registeredが薄くなると、「今すぐ受渡に使える弾」が貴重になりやすく、期近が強くなったり、期近と期先の価格差(スプレッド)が歪みやすくなります。

ここで、普通は市場に調整メカニズムが働きます。期近の価格にプレミアムが乗って、「今すぐ渡せる銀」が高く売れる状況になれば、Eligibleの在庫を持つ人が、ワラントを発行してRegisteredに回し、供給側に出す動きが増えやすいからです。

つまり、期近のプレミアムは「供給を呼び込む値札」のようなものです。EligibleからRegisteredへの切り替えが増えれば、受渡に使える弾が増えて、歪みが落ち着きやすくなります。

ただし、この調整が必ず起きるとは限りません。例えば以下の事情があると、プレミアムがあっても供給が出てこないことがあります。

  • 売りたくない(長期保有、戦略的保有)
  • 現物を引き出したい(別用途や別市場へ移したい)
  • 担保に入っている、契約上の制約がある
  • 手続きやコスト、社内フローの都合で動かしにくい

だからこそ重要なのは、「プレミアムが出ているか」だけでなく、実際にEligible→Registeredの切り替えが増えているかをセットで見ることです。

「崩壊」と断定できるか:受渡通知の増加だけでは言えない

噂が強く見えるのは、「受渡通知が増えた」という事実から、いきなり「だから崩壊する」という結論に飛びやすいからです。しかし、受渡通知の増加だけでは、そこまで断定できません。

本当に警戒が必要かどうかは、次のような追加のサインが重なっているかで判断する方が安全です。

噂に振り回されないためのチェックリスト

「火災報知器が鳴った」あとに見るべきものを、チェックリストとしてまとめます。

  • Registeredが“連続で”減っているか(単発ではなく、週~月で確認)
  • Eligible→Registeredの切り替えが増えているか(供給の呼び込みが効いているか)
  • 合計在庫(Eligible+Registered)が減り続けているか(倉庫から外へ出ている可能性)
  • 期近-期先の歪みが張り付いているか(需給ストレスが継続しているか)

これらをセットで見ると、「単なる名義変更の増加」なのか、「引き出しを伴うストレス」なのかの見分けがしやすくなります。

まとめ:受渡通知は“警報”だが、結論は追加データ次第

受渡通知が増えたという話は、まず倉庫内の名義変更が増えた可能性を示します。一方で、名義変更が増えることが引き出し需要の高まりを示唆する場合もありますが、確定ではありません。

本当に警戒が必要になるのは、名義変更に加えて引き出しが増え、在庫が細り、スプレッドの歪みが続くような状況です。噂の強い言葉に引っ張られず、在庫×切り替え×スプレッドのセットで冷静に確認していきましょう。

※本記事は情報提供を目的としたもので、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。最終的な投資判断はご自身で行ってください。

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